スープの始まりは、紀元前のそのもっと前までさかのぼります。
おそらく「調理」という文化的行為を人類が初めて行ったとき、その方法は「焼く」や「蒸す」などといった単純な火の利用に過ぎなかったことでしょう。
どのようにして人類が食材を「調理」するということに気がついたのかは諸説ありますが、おそらく山火事などの偶発的なことが発端だったと思われます。焼けたり蒸されたりして死んだ動物や魚を食べてみたら、予想外に美味だったのかもしれません。
火を使っていたことがわかっているのは原人といわれる人類ですので、遅くともおよそ80万年前には、人類は「調理」するという知恵を持っていたといえます。
「煮込む」という調理法の誕生
しかし、道具を必要としない、あるいは自然界ですぐに手に入る道具(石や葉など)で行える「焼く」や「蒸す」という技術に対して、「煮込む」という調理法は土器の登場を待たなければなりませんでした。火にかけても燃え尽きることなく、かつ水が漏れることもないという道具が作られるようになって初めて、「煮込む」ことが可能になります。
検証されていないので確かなことはわかっていませんが、中国で2万年前の土器が発見されたという情報もあり、これが正しければ世界最古であるとされますので、「煮込む」という調理法は、人類の歴史からいえば新しい調理法だといえるでしょう。
技術発展とスープの発達
やがて、土器・金属器の製作技術の発達とともに、世界中にさまざまなスープが誕生します。海では魚介類、山では獣肉、農耕が始まれば野菜と、さまざまな素材のうま味を利用して地域色豊かなスープが作り出されました。
ポタージュといえば、ポテトやコーン、パンプキンなどの素材を生かしたとろみのあるスープのことですが、実はその語源は「鍋に入れられるもの」という意味のフランス語からきています。
また、イギリスではポタージュといえば一つの鍋で煮た主食を家族で取り分けて食べる料理のことでした。
つまり、「鍋にいろいろな素材を入れて煮込み、みんなで分けて食べる料理」が、スープの始まりです。温かい湯気の向こうに、家族や親しい人たちの笑顔を見ながら分け合って食べるということこそ、世界中のスープに見られる共通点です。
スープが与えてくれる安らぎは、そうしたスープの性質から生まれるものなのかもしれませんね。
■Lesson1-1 まとめ■
- 遅くともおよそ80万年前には原人と呼ばれる人類が「調理」を行っていた。
- 道具を必要としない、あるいは自然界ですぐに手に入る道具(石や葉など)で行える「焼く」や「蒸す」という技術に対して、「煮込む」という調理法は土器の登場を待たなければならなかったため、「煮込む」調理法は人類の歴史の中では新しい調理法と言える。
- 土器・金属器の製作技術の発達とともに、世界中にさまざまなスープが誕生した。
- 「ポタージュ」の語源は「鍋に入れられるもの」という意味のフランス語である。イギリスではポタージュといえば一つの鍋で煮た主食を家族で取り分けて食べる料理のことであった。
- つまり、「鍋にいろいろな素材を入れて煮込み、みんなで分けて食べる料理」が、スープの始まりである。


