小麦粉で練った生地を手でちぎって丸め、汁物にいれて煮込んだ日本の郷土料理です。その歴史は古く、長い歴史のなかで日本人を支えたスープでもありました。
すいとん
すいとんは水団と書き、その名の通り汁物(水)に浮かんだ団子のような粉(団)です。
小麦粉を練って汁に入れるという作り方は至ってシンプルですが、水練りした柔らかいものを湯に落として作ったり、練って丸めた団子状のものを茹でておき、味噌汁や澄まし汁にいれて作るなど、多くのバリエーションがあります。塩をいれ固練りにして団子様にしたものを数時間寝かせて汁などに落とすことで、うどんに近い食感で作ることもできます。
その歴史は古く、室町時代の文献にはすでに登場しています。江戸時代から戦前にかけては、すいとんのお店や専門屋台などもでき庶民の味として広く親しまれていました。
すいとんのご当地バリエーション
「すいとん」という名前は全国的ですが、実はその呼び名は地域によって全く異なり、「ひっつみ・つめり・とってなげ」(岩手県)「はっと(はっとう)」(宮城県中心とした東北地方)「おだんす」などの名称があります。
名前が様々なように、中に入れる具材や出汁が地域ごとに違うこと、小麦粉を熟成させたり丸めたりと料理法も地域ごとに異なることを考えると、すいとんは個々に異なる郷土料理ともいうことができます。また、同じ地方であっても地域や家庭ごとに調理法と料理名が異なることもあり、家庭の母の味、といったところですね。
世界のすいとん?
実は世界にも「すいとん」のようなスープは多く存在します。
すいとんは英語ではダンプリング(dumpling)と言われるものの1つに分類されます。ダンプリングとは、小麦粉などのグルテンを含む穀類や木の実などを粉末にして水練りしたもの、あるいは卵・牛乳で練り、団子状にしてゆでたもので、シチューやスープに浮かべるものを指した言葉です。
また、ゆでたじゃがいも、小麦粉、米、または両方に塩と水を加えて練り上げ、丸めてから茹でたり、蒸したりしたものや、小麦粉などの生地で肉・野菜などを包んだ料理もダンプリングと呼びます。
つまり、日本のすいとんや蕎麦がき、中国の水餃子やワンタン、イタリアのニョッキなども英語ではダンプリングに分類されるのです。また、この小麦粉で練ったものを熟成させたりのばしたりすると麺になるので、うどんなども実はとても近しい存在といえます。
このように世界各地で多様なダンプリング料理が伝統料理として存在しています。
日本の歴史とすいとん
すいとん、というと戦時中の食事としてのイメージがある人もいるでしょう。
不足するコメの代わりに用いられるようになったすいとんでしたが、当時は、そもそもその原料となる小麦粉も不足していましたから、代わりに大豆やコウリャンを粉にしたもの、あるいは米ぬかなどが用いられるようになりました。しかも昆布もかつおぶしもないので出汁はとれず、具などは当然のようにほとんど入らず、塩やしょうゆだけで味をつけたお湯に入れて食べたといいます。
今の私たちにはとても食べられないであろう代物ですが、このようなすいとんですら食べられれば良い方だったのですから、戦争が人々にもたらした影響がどれほどのものであったのか、すいとんのレシピからだけでもうかがい知ることができます。育ちざかりの子どもたちがどれほど辛い思いをしたのかも、察して余りありますね。
悲惨な歴史のなかでも私達と共に歩んできたすいとんですは、現在では手軽で栄養満点の汁物になりました。平和な時代のおいしいすいとんを、いつまでも味わえる社会であってほしいものです。
≪材料(2人分)≫
具にするものは特に決まりはありませんから、冷蔵庫の残り物などいろいろとチャレンジしてみましょう。意外なレシピが生まれるかもしれませんよ。
煮込みすぎると煮崩れてべたべたしてしまうので、気をつけるようにしましょう。
- 小麦粉:40g
- 水:大さじ2
- キャベツ:60g
- しらす干し:小さじ2
- だし:2カップ
- 塩:1g(小さじ1/6)
- しょうゆ:小さじ1/2
≪作り方≫
- 小麦粉を水で練り、団子にします。
- キャベツはざく切りにします。
- 団子とキャベツをだしで煮ます。
- しらす干しを加え、塩・しょうゆで味を調えます。しらすから塩分がでますので、注意しましょう。
■Lesson 6-4 まとめ■
- すいとんの歴史は長く、室町時代の文献にはすでに登場している。
- 地域により名前や、出汁、材料や調理法が異なるなど、地域色の強い伝統料理として現代でもたくさんのすいとんがある。
- すいとんは世界ではダンプリングという料理に分類される。ワンタンやニョッキなど、世界には様々なダンプリング料理がある。
- 不足するコメや小麦粉の代わりに大豆やコウリャンを粉にしたもの、米ぬかなどを用いて作られた時代もあった。


