Lesson 1-4 東洋のフルコースは「スープばかり」?

東洋における「スープ」とは

Lesson 1-3 で学んだ西洋の食文化でのスープに対して、東の稲を中心とした稲作文化の地域、すなわち東アジアなどではどうかというと、スープは「飲む」ものです。

では、これを日本の食文化を例にして考えてみましょう。

 

日本のスープと言えばお味噌汁

まず朝、二日酔いでなくとも日本人なら飲みたくなるのが「お味噌汁」ですね。和食の朝食には、絶対に欠かせない存在です。具を箸で食べた後は、直接お椀に口をつけていただきます。つまり、「食べる」ではなく「飲む」わけです。

ご飯は「食べる」で、お味噌汁は「飲む」というように言葉の上でも明確に区別します。しかも日本の汁物は、どのような場の食事でも、食事をしている最中にいつでも口にしていいものです。

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このように食事中にスープを口にするのは、日本だけではありません。韓国や中国などでも同じですし、また朝にはお粥を食べる習慣もあります。

「朝からスープ」は、東洋では特殊な話ではなくむしろ常識であるわけです。

 

西と東のスープ文化が出会った19世紀

この西の常識と、東の常識がぶつかったのが19世紀でした。

日本で江戸幕府による鎖国政策が終わり、明治の時代が明け、西洋の「食べるスープ文化の人」たちが日本や中国などにたくさんやってきました。彼らが、日本にせよ中国にせよ東洋のフルコースを味わったときの感想は総じて、「スープばかりで退屈な食事だった」というものでした。

 

「食べる」と「飲む」その大きな文化の違い

KPG_Payless/Shutterstock.com

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日本でも中国でも、スープは食事の最中に「飲む」ことが普通ですので常に膳の上にのっています。しかし、欧米の人たちにとっては、いつまでたっても食事の最初に「食べる」ためのスープが下げられず、他の食事が出てこないため、「いったい、いつになったら食事が始まるんだ?」という感覚だったのかもしれません。

しかし、「飲むスープ」の文化を持つ稲作文化の人々は、ご飯とともにスープを「飲み」ます。ですから、スープは常に膳にのっていなければならないもの。すなわち東洋のスープ文化と、西洋のスープ文化とは、食事の過程における位置づけが違うのです。

このように、食文化においてスープが発展してきた歴史は洋の東西で大きく異なります。スープの違いを追えば、食文化の違いを明らかにすることもできるでしょう。食のグローバル化が進む昨今、スープからいろいろな地域の食文化を知るのも楽しみのひとつです。

 

日本にも定着した西洋のスープ

ところで近年、日本では朝食にスープを「飲む」ことも多くなっています。お味噌汁の代わりにスープという文化もずいぶん定着しているのです。これはまさに日本の汁物文化と、西洋のスープ文化が合体して形作られた日本らしい新習慣であると言えます。

このように、スープに対する考え方や価値観は、地域や民族によって大きく異なります。
そうした文化についても理解を深めながら、スープを味わってみてください。

 

■Lesson1-4 まとめ

  • 東の稲を中心とした稲作文化におけるスープは、常に膳の上にのっていて、「食事の最中に飲むもの」であり、朝食の際にも日常的に食卓に並ぶ。
  • このように、スープに対する考え方や価値観は、地域や民族によって大きく異なり、スープの違いから、食文化の違いを明らかにすることもできる。