静岡県 とろろ汁
「鞠子(丸子)の宿のとろろ汁」は、なんと江戸時代から続く静岡名物です。
松尾芭蕉の俳句(『猿蓑』)にも詠まれていますし、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』でも弥次さん北さんがとろろ汁を注文しようとして店の主人とトンチンカンな問答を繰り広げるシーンがあります。歌川広重の「東海道五十三次」に描かれた「丁子屋」というお店は、今も静岡市で営業を続けているとろろ汁の老舗です。
江戸時代のスープごはん
さてその「鞠子(丸子)の宿のとろろ汁」は、自然薯を使った汁で、Lesson4-6で学んだエジプトのモロヘイヤスープの上をいくヌメリを持ちます。スープとはいってもとろろ汁そのものではなく、ほかほかの麦ご飯にかけていただきます。
ですから、江戸の「スープご飯」と呼ぶほうが適切かもしれませんね。手軽で安価でしたので、ファストフードとしても人気があったようです。
「丁子屋」のレシピは、かつおぶしからとった出汁、白みそと卵をあわせるそうです。創業1596年といいますから、400年以上の歴史を持つ味です。今でもそれを味わうことができるというのは、うれしいことですね。
山梨県 ほうとう
江戸時代の書物に、今の国語辞典のような『俚諺集覧』というものがあります。そこに「ほうとう」とは、「うどんの粉のつみれのこと」で、土地の人たちは「麦ほうとうと言う」と書かれています。
こちらも江戸時代から食べられている物で、うどんのようなものですが、うどんほどは長くありません。また、うどんのように寝かせることなく、すぐに切って煮込みます。
ほうとうを煮込む汁は、野菜たっぷりのみそ仕立ての汁です。煮干しなどからとった出汁に、かぼちゃとさといも、油揚げ、大根、にんじん、ネギというようにたっぷりの野菜を煮込みます。煮崩れしやすいのですが、そのどろどろになった状態が「ほうとう」の良さとされています。
米作りの難しい山間部に住む人々の工夫から生まれた味です。
